Tsunami Times

  • イージーに釣れる釣りもいいけれど、ロマンある釣りがしたい、どっちかと言うと。

     その日は妙な予感めいたものがあった。

     Fishing Safariの撮影に行くつもりだったのだけれど、行こうとしていた方面の天候が不穏だったし、予備として考えていた琵琶湖や淀川も風が結構あって、そっちに向かっても果たしてどのくらい撮れるのかどうかと言う懸念もあり、次週のカメラマンの予定が空いて予備日が出来たこともあって前日に延期に決めた。

     それでも今年は一度も一緒に釣りに行けていない末廣と言う男がそんなタイミングで事務所にやって来て、しかも翌日は丸一日とはいかないまでも空けられると言うので、じゃあダメ元で近くの淀川へ行ってみるか、と言うことになった。しかし、その後、俺の体調が喉がイガイガしていて軽い頭痛もするなど微妙になり、夜にはやっぱり次の機会で、と言うことに落ち着いてしまった。

     翌朝、体調は悪い方にはさほど進展が見られず、これなら行けたなあ、と思うとソワソワし始める。今思うと、第六感をともなう種類のソワソワだった気がするのだけれど。そんなところにご近所の末廣が再び事務所に来たものだから、やつのちょっとした仕事の打ち合わせ終わりで「ほんじゃ、やっぱり少しだけ行きますか」となった。それからぼちぼち準備して、お昼前に帰って来た末廣を240に乗せて枚方の河川敷公園駐車場へ。

     道中、ソワソワはゾワゾワに変わって行く。流入河川は軒並み濁っていて、当然淀川も増水と濁りが見込まれる。それにこの程度では茶色い濁流ではないということも推測出来た。それはすなわち適度な増水と適度な濁りということ。加えてこのターンの小潮は日曜以来うちのユーザーからの投稿も多くて、全国的に魚が上向き加減の7月のXデー的要素もなくはない。どうやらデカい魚が出る条件は出揃った。口にすると逃げる気がして言わないでおいたけれど。後々思い出してみると、数年前に50upを同船者と合わせて3本釣ったのも熱い熱い7月のある日だったと思う。あとの心配は風のみ。

     いざ準備して出船したのはほとんど正午くらい。急に決めたので仕方はないのだけれど、短パンに半袖という出立ちを少々後悔しなけれなならないほど、盛夏に近い日差しが痛かった。後になって見てみたら、たっぷり日焼け止めを塗ったにもかかわらず膝頭がほとんど火傷状態だった。

     少し前にミナミ240と来て調子のよかった上流方面へ舵を切る。風はやはり強めだったから、川幅の狭い上流のほうが影響を受けにくいということもあって。時間は16時半がリミットなので、いつも行く上限のあたりまで一気に駆け上がる。案の定、濃い濁りの部分はなくはないが、ほとんどの水域はいい感じのミントグリーンで、前回よりもさらに増水気味。これならボートの底を擦る心配はほぼなく、9.8馬力のアクセルをほとんどフルスロットルに開ける。

     風裏にあたる右岸を下る。実はいつもは最初に左岸を下るのだけれど、この日は前回ふと思ってやってみた右岸が当たったということもあるからだった。それに道中見ていて気づいたのだけれど、右岸には増水で普段はないシャローが多く出現していた。勘に過ぎないのだけれど、前回もよくよく考えればそうだったように、魚はよりシャローにさしている、そんな気がしていた。

     やがて狙っていたそのシャローへと差し掛かる。末廣が操るのはSonic Vita。俺と乗るとやつは十中八九これをチョイスする。アクションは終始移動距離を抑えたターン。これでやつは実によく釣る。おそらく俺よりアクションは上手。これの他に覚えがあるのはCosmo DPあたりで、やつのチョイスには実はあまりバリエーションはない。と俺は思っている。ちなみにそのSonic Vitaは使い込みによりお尻が凹んでいて、そのせいでアクションがいいんだとか。

     それはさておきその年季の入ったSonic Vitaにえらい勢いのミスバイトがあったかと思うと、そのままアクションするそいつに二度、そして三度目の追い食い。ようやくフックアップしたそれは見るからに見事な体型の血気盛んなな50up。いやはやそんなに激しいバイトを見るのは久しぶりだった。ちなみにちなみに、そのSonic Vitaには、食ってくる魚をなんとしても乗せたいらしく、スプリットリングを介して他社トレブルフックが付いていて、やつはこれを欲張りセッティングと呼んでいる。

     いちおう断っておくと、このセッティングにはバイトのある魚をフックアップしやすくするメリットはあるものの、障害物を越えにくいせいでその奥に入れづらく、それはつまりはバイトの機会が減ってしまうというデメリットでもある。このセッティングはスナッグレスにする意味のない、例えば西表島の河口なんかでは俺もよくやるけれど、無粋ということが難点でもある。Tsunami Luresのデフォルトはご存知のDos Cactusダブルフック仕様で、その逆に若干フックアップし難いと言うデメリットはあっても、障害物の奥にプラグを送り込むことも可能でバイトチャンスは増える。どちらも一長一短でどちらを選ぶのかは使い手次第なのだけれど、もちろん趣をも考慮に入れたデフォルトは推奨ではある。それをも踏まえて末廣は敢えてこれを「欲張り」と表現するのでしょう、たぶん。

     そのシャローにはまだ魚がいそうだったので、船首を差し戻してみると、末廣に再度ミスバイト、そして俺のNiva Rant DP(Rant Prop)のジャークに凄まじいバイト。ただし、これは操船するためにエレキのハンドルに手がかかっていてテンションかけられず、ロッドを立てる間もなくフックアウト。この日は増水で流れが早い上に下流側から斜めに吹く風が強く、操船し辛いのなんの。それにしてもあれはデカかったはず。

     それから30分ほど釣り下り、やがてさっきと同じように反転流が絡むシャローに差し掛かったところで、末廣のSonic Vitaにまたも激しいバイト。これを難なく乗せてしばらくファイト。よく引く、これまた同体型の見事な50up。しかし、序盤で50up×2とは驚き。やはりXデーだった。これで彼はSonic Vitaになおさら固執せざるをえず、終いまでこれを固持。

     まだまだチャンスはありそう、と言おうか、不思議なものでこれで終わりそうにはない気がますますしてくる。ただ、この流れと風の中で操船しつつ、この日当たりのSonic Vitaを細かくターンさせるほどに俺のテクニックはなく、比較的アクションの楽なこの日もバイトがあり前回も釣っているNiva Rant DPと、前回釣ったSlapphappy Shad Mini DPと、前回バラしてしまったSlapphappy Beaverあたりにルアーを絞る。ただ引きアクションの方が操船していてもテンションがかかりやすく、フックアップしやすい。Niva Rant DPはジャークを主体にするからただ引きとはいかないが、リーリングでこれをやるとその点是正しやすいのと、細かくロッドアクションを加えなくても済む。

     船首を下流側に釣り下るうち、風と流れでどうしても重い船尾が左右に振れがちで、末廣が2尾目を釣った後あたりから、これを逆手に取って船尾を下流側、つまりは船尾を前にして釣り下ってみることに。流れが早い川では以前からたまにこれをやるのだけれど、この日は下流側からの風のせいもあってか、これが比較的楽だった。ただ、これはフロントになる操船する側に若干優位に働く気がしてあまりやらないのだけど、ゲストが50upをすでに2本も釣っているとあっては、旧知の間柄でもあるのでそこは遠慮なく。かえってこっちの方が釣りやすいとの末廣の感想もあり。今回は思いのほかこれが操船しやすかったので、撮影なんかだとかえってこっちの方がいいのかも。

     そうこうしつつ下っていくと、末廣の2本目の50upからおおよそ30分後、岸際の少し浅めのなんでもないちょっとした反転流にキャストし、少し引いたあたりでSlapphappy Shad Mini DPに激しくはないものの重めのバイト。前回もバイトはこういう場所だったから狙い通りと言えば狙い通り。最初はそう大きいとは思えなかったのだけれど、末廣曰く最初に見えた頭がめっちゃデカかったんだそう。数秒後には水中で首を振るその姿に俺もデカさを確信。そのトルクに少々ビビりつつ、突っ込みに耐えつつ、慎重にファイトするも、そいつはSukiyaki 56Mを容赦なく曲げる。強烈な抵抗にやがて思わず腰を浮かして立ち姿勢になってしまうのは、こう言う時にありがちな俺の癖だ。それでも船尾を前に安定したボートの状態が功を奏したか、エレキに慌てて手をかけるようなこともなく、思っていたよりスムースにそいつは末廣の構えるネットに巨体を横たえた。

     いやはや迫力。測ってみればおおよそ62cm、重さは6lb強ほどだけれど、立派な60upだ。血管で赤く滲んで擦り切れた尾鰭と飛び出した眼球に威容があり、同時にそれは決して若くはないということを物語るのである。

     これが淀川での初の60upとなった。ちなみに琵琶湖では4本の60upを、メキシコでは1本の60upをキャッチしているから、これが生涯6本目の60upである。ここ数年は60upから遠のいていたから感慨もひとしお。還暦にしてロクマルを釣ると言う、ロクマルのロクマル、逆エイジシュートとなったわけだ。

     ご参考までに、Sonic Cigarで釣ったメキシコの60ジャストくらいのは12lbあった。これ以外に60はないものの10lbを2本、同じ日に釣った。背鰭側あるいは腹側から見ても恐ろしく太く、フットボール体型とはこういうのを言う。これが重さでは最大。対して最長はSlapphappy Beaverのプロトで釣った琵琶湖の65cm。これは確か8lbほど。いかに60cm12lbが太いかおわかりいただけるかと。

     閑話休題。かくして予感は的中する。これぞ淀川の奇跡。気象、水の状態、月齢なんかの自然条件、プラグのチョイス、タックルのチョイス、キャストにアクションetc.の人為的なもの、あるいは精神状態、そして勘・・・そんな、もうそれこそ幾多の条件がひとつところにピタッとおさまった時、それは突然やって来るのだ。これが撮影だったらと思わないでもないのだけれど、そうだとしてもこの魚に出会えていたかどうか。

     その後は4時半頃まで釣り下ってみるも、枚方あたりで俺が40upを追加してタイムアップとなった。

     今回活躍のSlapphappy Shad Mini DPはCalavera Mint Green。ハイアピールにチューンしてあり、さらにはチンフラップチューンを施したもの。前回の淀川で釣ったのもこれと同じプラグ。先日のささ濁りの相模湖では同プラグ同チューンのAztec Fish Chartreuseに反応があった。ささ濁りのその色合いによく似たカラーが結果を出した昨今の釣りではある。ハッピー師匠はこのミントグリーンを早速60カラーと言ったけれど、淀川のささ濁りに効くという意味で淀川ミントグリーンとでも呼ぶとするかな。

     このSlapphappy Shad Mini DPはそろそろ在庫が少なくなって来ました。告白すると、これに限らずVickitanを含むうちのインジェクションプラグの全ては、実は都合により再生産が不透明で限りなく不可能に近いのが現状です。手に入るうちに手に入れておくのが無難。

     さて、今回の淀川の奇跡と最新のFishing Safariに収録の七色ダムの50upを経て改めて強く思うこと、それは、イージーに釣れる釣りもいいけれど、ロマンある釣りがしたいということ。還暦になった男は今後もそう言う釣りを志向するんでしょう、たぶん。

     ところで、夜になって体調は案の定少々悪化。今朝には喉の痛みが酷く念のため医者に診てもらうも、そう酷い状態ではないらしく無理をしなければおそらく大丈夫でしょうとのこと。末廣は60釣ってバチが当たったというけれど、ま、それがこのくらいで済むのならかえってラッキーではある。

     さて、ロマンある釣りに不可欠なTsunami Luresの最新プラグSweepy JGのご予約は明日が締め切り。淀川ミントグリーン=60カラーベースのCF-MGもラインナップしてます。

     T字路sしのちゃんが今年の正月に相模湖で初バスを取ったというHB-SGもあります。

     そしてFishing Safariで元木が悲願の50upを取ったUGIもあります。

     馬鹿馬鹿しい中にロマンありと噂のRelic TSBもわずかながら余裕あり。

     そんな釣りの賛同者であるHEADZのいつも即効でSold Outのコラボにも若干余裕あるようです。

     そんな釣りにお似合いのパロディTシャツも明日がご予約締め切り。こちらはほぼ受注生産なので、確実に手に入れたい人にはご予約がお薦め。

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