Tsunami Times
旅、そして人生の機微
人生は旅である。逆もまた真なり。そして俺は俺であることを悟る。
旅はミナミ240との淀川に始まった。まるでつきものが取れたかのような1本をここで獲る。実はこの他にも1本、そしてバラしが2本。6月ですから、このくらいは当たり前なのだけれど、長かったここまでのことを考えるとそれはもはや当たり前ととらえることは出来ず、まさに奇跡だった。
その日の午後は同じくミナミ240と琵琶湖は湖北西岸に向かい、彼を先生に木こりの真似事。なぜここで木を切るのかについては近いうちに説明するけれど、ここで爽やかな汗を流したら、帰りは浴びるほどの疲労を全身で感じる。
翌日、パタゴニアのボストンに息子にもらったお守り(彼の裸だそう。その証拠にチ⚪︎コらしきものがまたの付け根あたりに)をぶら下げたら、新幹線に乗り新横浜へ。午後遅くに町田にあるミリメーター松澤の根城であるミリメーターズミュージックへついに。
画像左のエレキはここのオリジナルで、お店にうかがうこと自体も目的ではあるものの、これを弾かせてもらうことももう一つの目的。なぜって、ここで俺のオリジナルギターを作ってもらえることになっているから。そろそろその案もまとめないと。それにしてもシグネイチャーモデルとは、なんて素敵な響きだろうか。これだって音楽やっているものならばひとつの夢ではある。
それはそうと、いならぶ類い稀なギターを見てしまっては弾いてみないではいられなく、松澤氏お薦めのギターを何本か。オリジナルギターはもちろんだけれど、出てくるどのギターも意表を突いた一種ビザールなものばかりで、それこそ目から鱗だった。よく鳴る古い逸品がチープであるという矛盾が素晴らしい。もちろん、と言うか、だからこそギブソンなんかも貫禄の鳴りのものが置いてある。しかし、これだって2000年代と比較的新しいのにヴィンテージみたいに鳴っていて、実はリーズナブルだったりもする。
思わず、俺のJ-45とジャガーをトレードに出そうと言う気が沸々と湧いてきて、そのまま相談してしまう始末。対して旅から帰って早速やってきたミリメーター松澤のプレゼンが実はワクワクするほど絶妙だった。あまりに絶妙で即決しそうになるも、そこはさすがに悩み中。次なるプレゼンも気になってしまうし。
魔窟のミリメーターズミュージックをそこそこで切り上げて、次にミリメーター松澤と向かうのは、相模湖にほど近いT字路sの根城。彼らが選んだその場所は、山中のだだっ広い古い工場跡。ここを改築して住処と仕事場にするらしい。噂に違わぬ、いろいろと凄いところでした。すでにここでサントラなんかの仕事をこなしたというから恐れ入る。
ここで二泊。しかし用意された俺の寝床は軒下のテントの中。ま、それも良しである。シャワーが未だなく、外の水道での水浴びにはまいったけれど。そうそう、着いて早々、俺はヒルに血を吸われるという洗礼を浴びた。短パンはダメって言ってくれないと、しのちゃん。ちなみに画像は某有名建築家もうなったという小便器。
次の日はもちろん三人で相模湖へ。インスタの書き込みで知ったのだけれど、俺がここに来るのは14年ぶりらしい。釣る気で挑んだのはもちろんだけれど、あえなく・・・。
しかしチェイスは無数にあり、バイトも3発はもらったので、終始飽きることなくキャストを繰り返す。フロントシートに座るのも、4月の西表でのガイドフィッシング以来、バスだといつぶりだかわからないくらい。慣れないこのシチュエーションに慣れないバックハンドも湿りがちだったけれど、さすがに数時間もあればなんとかこれもきまるようになった。
操船はミリメーター松澤。遠慮がちにバックシートでキャストする彼の気持ちにも応えようとは思ったものの結果はついてこず。付かず離れずもう一艇で釣りをするしのちゃんも、Fishing Safariの番外編を撮るべく、iPhoneとGoProで奮闘してくれるも見応えのある収穫はなしとなった。
夜は夜とて、ここではすっかりローカルのおばさんと化したたえちゃんも交えて盛り上がった。相変わらず心のこもったたえちゃんの手料理も堪能いたしました。
それにしても彼らT字路sのこのところの勢いったら神がかって来てる。工場を根城にするってのもその勢いのなせる技で、それさえもまた肥やしにまだまだ飛躍しそうな予感。
ところでこれはしのちゃん愛用のSweepy JG。割れ方の半端ない歴戦の勇姿。これが正月の相模湖で魚を獲ったやつである。七色ダムでもこれで特大のバイトをもらってもいる。しかし、修復に修復を重ねたこいつもそろそろ引退の時期のようで、それをきっかけに再リリースが決まった。このカラーもリニューアルしてラインナップしてます。
最終日は仕事前に釣りをするというミリメーター松澤を見送って、3人で隣の神社にお参り。樹齢550年の杉の荘厳さに圧倒される。森って崇高ですよね。今日のしのちゃんとのLINEのやりとりによると「今日は朝でかい鹿二匹に蛇、夕方たぬき、猿、夜はホタルにカエルという生命感半端ない日でした」とのこと。そりゃそうよね、熊だっておるで、たぶん。
こうしてまるで釣りキャンプの二泊は終わりを告げるのだった。
そのT字路s工場へまだまだ真新しいチューンドハイエースで颯爽とやって来たのが下の髭男=竜也である。そもそもこの旅のきっかけはこの人の希望があったから。オルタナティブ・アウトドア(と勝手に俺は形容してしまうけれど)の雄、ネイタルデザインと俺をぜひとも引き合わせたいのだという。俺の、あるいはTsunami Luresのセンスをずっと以前から買ってくれているやつのたっての希望で、そんな風に請われると悪い気は当然せず、どんなことになるのか楽しみにしていた。
渋谷の事務所に二人で赴いてネイタルデザイン塚田氏と西尾氏とあいまみえる。詳しくは省くけれど、なんだか面白いことになりそうな予感。
盛り上がった(と俺は思っているけれど、さてどうだろうか)そのミーティングの後は、栃木は日光方面へと竜也は車を走らせる。本当言うと、Sweepy J DPで中禅寺湖のレイクトラウトを狙うというのが当初の目的だったのだけれど、運悪く今年はその魚がシャローにさす時期が早々に終わってしまったようで、目的地はその中禅寺湖の上にある湯川に変わる。おかげで俺はおそらくは三十数年ぶりとなる渓流でフライフィッシングに興じることに。
その日は中禅寺湖の駐車場にて車で夜を明かす。ここに来れば温泉に入れると思っていたら、休みだったというのはご愛嬌。水浴びさえもままならず。
翌朝早くに中禅寺湖畔を出て、そこからそう遠くない湯川へ向かう。湯川はスプリングクリークとして三十数年前にも雑誌に紹介されていたから一度は訪れてみたいと思っていたところでもある。
それにしても、この中禅寺湖から湯川というところの圧倒的な美しさにはさすがの俺も思わず魅了されてしまった。まるで作ったようなそれは素晴らしいのひとことで、維持するために払われている手間も窺い知れるというもの。
しかも俺のような素人とも魚は遊んでくれるのである。おそらくは二十は超えていたと思うけれど、数え切れないくらいの魚に触れることが出来た。竜也が巻いたパラシュートパターンのフライに躍り出たのは当然だけれどそれを超える数。これで放流されていないっていうんだからいったいどうなっているんでしょ。環境の成せる技か。
日本ではここにしかいないというブルックトラウトという魚には初めてお目にかかったけれど、これは本当に綺麗。そして妖艶。渓流魚って綺麗というのはわかっていたけれど、こいつは一種独特だ。
午前中から降るという予報の雨が雷鳴とともに降り出したのはほとんど夕方で、その頃には同行の氏たちとすっかり釣りを堪能していた俺だった。
借り物のネイタルデザイン×サブロックのハーネスバッグ他を身に纏い、お久しぶりのチャドくんとWで魚を手にしてご満悦の図。ロケーションもなんだかまるで夢の世界のようでした。
そのせいか、釣り終わって宿をとった大宮へ向かう道中は、現実離れした雷雨にまみれる。1時間超もの間、車窓から光続ける雷をワーワー言いながら竜也と見た。あんなの初めて。
こうして予想をはるかに上回って充実した旅が終わる。収穫はこれから俺が向かう道筋を予見するようにも見える。それが旅というものなんだろうな。きっとそうだ。
23/07/01