Tsunami Times

  • スタンダードをぶっとばせ

     朝から狂ったように、と言うと大袈裟だけれど、先週に続いてキース・ジャレットを聴く。その静謐な側面も過激な側面も合わせて聴き尽せとばかりに。どうも相変わらず気分は、スタンダードをぶっとばせ、だ。

     あなたがもしもクリエーターならば、一か所に留まることを選ぶだろうか、それとも新たな地平を切り開くことを?元木の理想は後者である。あくまで理想とはいうものの、いつだってそうであることを切実に願ってやまない。

     TLCC(Tsunami Lures Camping Clubの略です。メンバーはうちの家族とジーニョとT字路sとカミオカというごくプライベートなクラブ。第一回例会が先頃、下北山村にて開催)でこんな話を聞いた。プラスチックルアーよりウッドのルアーの方が魂が込もっていると言った男と、ヘドンのプラスチックルアーをこよなく愛する男が口論になったのだそう。なんだかちょっと素敵な話だと俺は思う。そこまでルアーを語りたい男たちがいるなんてことが。

     ただし、そこにはルアーメーカーとして一家言ないではない。ウッドのルアーには魂が込もっている、それは間違いではない。でも清水の舞台から飛び降りるほどの覚悟をもってプラスチックルアーを作ることについて、そこに魂が込もっていないと言えるだろうか。

     ヘドンのルアーには、プラスチック製品であるにもかかわらず、そこにはめくるめくストーリーが垣間見えて魂さえ感じられる。押すに押されぬ巨人でもある。ただもうひとつ言わせてもらうとすると、小さなメーカーの無名のプラスチックルアーにだって魂はあるのだ。

     例えばプラスチックはオールドヘドンしか認めない。あるいはトップウォータープラグはハンドメイドしか認めない。いいでしょう。チャレンジしがいがあるってもんだ。ってところで、スタンダードをぶっとばすべく、挑んで来たのがTsunami Luresである。ま、それがそのプロダクツから見えて来ないと言われればそれまでだし、相変わらず力不足は否めないのだけれど。

     何年かぶりに訪れた七色ダムのビューティフルな姿、そしてサディスティックな内面が俺にそういうチャレンジ魂を思い起こさせるのだった。

     ちょっと前の琵琶湖で丸1日ノーバイトで過ごした後、日暮れ寸前にビーバーにデカい魚のバイトをもらった時には、なんて鮮烈な印象をくれるのかと思った。あんなに心に残るバイトはこのところお目にかかっていない。七色ダムにはそれさえなかったものの、しかし美しい光景と洗礼はこうして深く心に刻まれたのでした。また、きっと行く。

     もちろん釣りばかりではなくて、キャンプの方も充実のTLCCである。冬美ちゃんの料理は相変わらず美味かったのだけれど、たえちゃんの米粉攻撃にはここ数年グルテンフリーで過ごすこの俺は感涙を通り越して失神寸前だった。

     米粉の自家製パンにピザに天ぷら・・・それに片栗粉だけで揚げる絶品の唐揚げ・・・これが実に美味い。俺だって頑張ったローストチキンに塩釜ポークも霞むってもの。まさにスタンダードである小麦粉料理を凌駕する勢いに恐れ入るしかないのでした。

     しのちゃんの釣りに対する執着心と言い、たえちゃんのこののめり込み具合と言い、なんだかT字路sの力の源を垣間見た、というのは少し大袈裟か。それにしても次回作ってもらう予定の米粉の皮餃子は夢に出そうだ。

     薪を囲んで繰り出すトークにも馬鹿話からマジな話まできりがなく、終わりがなければいいのにと思えた2泊3日でした。帰り道の息子の口からも「みんな、寂しい」との言葉が何度も漏れて、彼の思い出にもきっと残るものになったのではないかと。

     さて、七色ダムでも出色のパフォーマンスを見せていた(結果はついて来なかったけど)リファインされたSonic Horn Miniは只今ご予約受付中。Sonicシリーズ中でも代表作と言っていいと思うのだけれど、なんとこれ8年ぶり。買っておいた方がいいかもしれません。

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