Tsunami Times

  • Loose Blues

    Bill Evans / Loose Blues

     朝ゆっくり琵琶湖へ向かう。特に選んだわけではないのだけれど、BGMはビル・エヴァンズ。ズート・シムズとジム・ホールとロン・カーター、そしてフィリージョーが一緒のFunkalleroが入ったやつ。これを聴きながら、そして自分で淹れたコーヒーを飲みながら運転する道すがらはいつになく気分良し。

     無造作に伸び過ぎていてまるで出来損ないのマッシュルームみたいな頭を、春だからと美容師おさむちゃんの提案で数ヶ月ぶりにサイドもバックもすっかり刈り上げた。彼曰く、アグエロばりのパリッとしたスタイル、いつもとは違う短めの後頭部がポイントだそう。さっぱりしたはいいが、この日の琵琶湖は冷えていて頭がスースー。特に後頭部が寒い。夕方はフードを被りっぱなしだった。

     午前中は少し暖かくて、狙いの昼まずめ時あたりはバスボート、陸っぱりに限らずそこここでバスを釣り上げる姿を目撃した。50upはもちろんロクマルクラスだって・・・。こんなことってめったにないから、今日を狙って来たのはこの時点でもはや正解は間違いない?なんて推測が頭をよぎるも、この日の相棒のおかもっちゃん含め我々に限ってはノーバイトで時間が過ぎてゆく。

     そうこうすうるちラインスラックの小倉君と湖上で遭遇。彼とは何度かこうして会ったことがあるが、ずいぶん久しぶりではある。「3つ釣りました」と彼、「4つだよ。わたしは1つ」とボートの前に乗った彼の相方。狙った場所に先に入っていたのが彼らだとは言え、衝撃的な言葉があったもんだ。それでもまだ「じゃあ、俺らにも釣れるよね」と考えるのは楽天的だろうか。

     その後、なんだかどんどん冷え込んで、俺の操るプラグにバイトは4度ほどあるも、これはとてもフックアップするような代物ではなく、案の定ノーフィッシュで日暮れを迎える。おかもっちゃんに至ってはノーバイトの洗礼だ。いやはや実に困ったもの。

      ま、しかし、3日前に神岡と二人してノーバイトに比べたら随分な進歩。「惜しい」と捉えるのが前向きと言うもの。名誉のために言っておくと、おかもっちゃんの場合は既に初バスをものにしております。念のため。

     ちなみにバイトがあったのは、Slapphappy Shad Jのショートジャークに2度、葦中のVickitanSweepy J DPのスケーティングにそれぞれ1度。釣ってないのでまるで説得力はないけれど、これらのタクティクスは普段はもちろん活性が落ちる傾向にある時にも効果を発揮することあり。

     ちなみにちなみに、冷え始めた午後からも小倉君は1本を追加して夕まずめにすがる我々をあとにとっとと帰って行きました。彼が何を使って釣ったのかは聞いてないので知りません。本人に聞いてちょうだい。律儀に帰り際に挨拶して行った小倉英次天才!

    Art Blakey Jazz Messengers / Caravan

     負け惜しみではないけれど、敗れて爽やか、この日の帰り道は心地のいい疲労感とそれゆえの妙な多幸感が心身を覆う。しかし、この程度でこんなに疲労を感じるとは、俺も年を取ったもんだ。

     おかもっちゃんと飯を食って別れて帰りのひとりの車中は、往きのビル・エヴァンズに続いて耳はジャズを所望するので、アート・ブレイキーをチョイス。そうこうするうち今度はキース・ジャレットが聴きたくなって、眠気も催してきたのでこれを大音量で。すると彼の例の呟きと叫びも聞こえて盛り上がる。

    Keith Jarrett Trio / Still Live

     賛否両論あるようだけれど、個人的には彼のその声が好きだ。他にも演奏中にブツブツ言ったり叫んだりする人はいて、こういうのは嫌いではない。こっちまでエキサイトする。これって要はパッションだと思うから。

     そういうのが聴きたいということもあれば、歌ってる時もあるし、そもそも音楽の音量はある程度デカくなければならないと思っていることもあって、ひとりの車中の音量はかなりデカいとは思う。たまに俺のを運転する嫁はそれに驚いてしまうらしくよく怒られる。それも降りる際にはだいたいの場合、少し小さくしているつもりなのにそれでも。

     それはさておき、とにかくそのキース・ジャレットのパッションは釣り帰りの多幸感を増幅してやたらと気持ちが良かった。

    YABUSAME 6ft Classic

     ところで近々リリースのプロダクトふたつ。

     ヤブサメは今月末にも入荷。6フィート。津波ルアーズのフルグラス標準とも言うべきクラシックが久しぶりに。十数年前、津波ルアーズがデザインした最初のロッドこのYABUSAME(ヤブサメ)は、Eグラス本来のトルクや粘りが強調されていて、キャスト可能なルアーのウェイトレンジ(5/8~1oz超)が比較的広くオールマイティーで扱いやすいとの定評あり。

     グラスが持つキャストとアクションのフィーリングは、低弾性カーボンでもコンポジット(グラスとカーボンの特性を併せ持つ)でも到底表現し得ない独断場の領域がある。ヴィンテージのような心地良さに、新たな可能性と現代的な実用性を兼ね備える、しなやかでたおやかなグラスのフィーリングを是非ともお楽しみいただきたいもの。

     サンプルがなくて、スレッドカラーのみのサンプル画像をとりあえず。初代を彷彿とさせるカーキオリーブのブランクにご覧のシルバーとグリーンとホワイトのスレッド。あらためてこれを津波ルアーズのプライドとするべく近々リリース!

     こちらはもう少し先の6月末から7月のリリースとなる、昨今いろいろなブランドとコラボ展開する東洋スチールにカラーを別注した、レトロ感たっぷりの例のタックルボックス。山型のシェイプに丸みを帯びる角、さらには打ち出されたTOOL BOX、Y-280(型番)、MADE IN JAPANの文字、それに誇らしげなTOYOのロゴがその雰囲気を醸すのだ。

     量産製品なのでハードルが高い東洋スチールのミニマムロットを無理を言って下げてもらうなんてことは、すでに仕入れのコストを半ば無視しているのだけれど、カスタムはさらにエスカレートする。ヴィンテージ感のある小さなステッカーに金属プレート、さらには升の大きさを変えることの出来る取り外し式のアルミの仕切り板まで。金属プレートに仕切り板は当然東洋スチールに依頼するなんてことは難しく、いつも依頼する業者さんにこれまた無理を言って作っていただく。

     今日はそのステッカーが届いた。まるでオールドのタックルボックスに貼ってあるような、メタリックのベースに魚とロゴ、自分で言うのもなんだけど、これ、非常に出来が良くてちょっと興奮した。

     右側にはあんまりキラキラしてないステンレスのプレートにロゴとそして波、ペンコ・ストレージコンテナのステッカーにも書いてあるFor Use On Fishing Equipment Onlyの刻印。For Use On Fishing Equipment Onlyとは釣り道具だけのためのものということで、つまりは釣り道具だけにここに入る特権を与えてあげて欲しいということ。実際は何を入れたっていいのだけれど。

     それにしても俺の初バスはまたもおあずけ。ルアーを作っている人なんですから、ユーザーに先んじてそういうことは済ましておくのが理想。でもそうはいかない、それもまた釣り。それをいくらか楽しいと思えることはある種の成長かはたまたあきらめか。でもそれがあるいは心地のいい疲労感と多幸感に繋がる、ふとそんな気がした春の宵。

     今夜もLoose Bluesをちょっと音量デカめで聴いてみる。もちろんひとりの事務所で。家でそんな音出したら大変ですから。ところでLoose Bluesって良い響き。アパレル別ラインの名前にどうかな。

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