Tsunami Times

  • Jeff Beck

     まるで友達を失ったような深い悲しみが静かにしかし怒涛のように訪れるのを感じた。そう、それは青春という名の友達。六十を目前にようやくそれを失ったことを悟る春。

     スティーヴィー・ワンダーはジェフ・ベックの訃報に寄せてこう語る。「今日、この曲(ジェフ・ベックがギターソロを弾いたLooking For Another Pure Love)を聴いたとき、その時のことが思い出されて感情的になってしまった。音楽には何かがある。ファンであるあなたにとって、曲はあなたをある時間空間に連れ戻すものでしょう」

     そう、そうなのである。ジェフ・ベックが亡くなったと聞いても、今ひとつ実感なんてものは湧かなかったのだけれど、しばらくして中学高校時代に良く聴いたBlow by BlowやWiredを聴き返していると、たちまち十代の頃の感情がありありと蘇った。そしてなにやらとんでもなく切ない心持ちになったのだった。

     正直言うと当時ベックは難しくてわけがわからなかった。しかしどうも聴くべきもののような気がして、したり顔で聴くうちにわかったような気がして、それが気分を高揚させた。変拍子なんてものを知ったのはこの時が最初ではなかったか。一生懸命指を折々拍子を数えたものだ。やがてギターの上手い友人に教わって弾ける部分は弾いてみたり。でも例えばScatterbrainのリフには相当手こずった。その時は弾けた気になっていたのだけれど、おそらくそう上手くはなかったはずで、今じゃもうとても弾けたものではないと思う。この時に才能のなさに気づいておくべきだったね。いや、気づいていたのかな、ほんとは。

     それにしても改めて凄いですね、70年代にこんなことをやってたベックって。数多のロック、ましてやフュージョンなんかとは一線を画する。彼のユニークなスタイルは突出していて、聴けば素人でもそれがジェフ・ベックだとわかる。クラプトンやジミー・ペイジやなんかとはある種別の衝撃がそこにはあった。

     今思えばしかし、リッチー・ブラックモアではなく、ましてやスティーブ・ルカサーやニール・ショーンでもなく、まさにこのジェフ・ベックにエリック・クラプトンにジミー・ペイジの御三家が俺の青春だったのかなあと。彼らはアイドル以上にアイドルだったのでした。ちなみにジミヘンも未だに大好きで、もちろん俺のギターアイドルですが、俺が聴き始めたのはこれより随分後のこと。

     ルアーを作っていて思うのは、いくら機能やデザインが優れていても、オリジナリティや個性が感じられなければ俺が作る意味はないと言うこと。それはいつの頃からかロックが心の奥底に巣食い、やがて芽生えたスピリットに違いないと今改めて思うのでした。

     青春は終わるのだけれど、そこから得たスピリットを熟成させるべくせいぜいあがくべし、と生涯前進し続けたジェフなら言うだろうか。ジェフ・ベックの精神よ永遠に。

     実を言うと、こんなことを書いている場合ではなくて、Hand Drawn Calaveraと別注製作、それに問屋の展示会に大阪フィシングショーの準備etc.におおわらわのこの頃なんですが、ジェフ・ベックに加えて高橋ユキヒロの突然の訃報を耳にするにつけ、なんだか青春の1ページがはらはらと舞い落ちてしまったようで、何かを書かずにはおれなかった元木でした。

     さて、その別注。

    「今後毎年新年1月に、
    津波ルアーズとコラボにて、
    毎年の干支をモチーフとした、
    干支ルアーを別注し続ける事を、
    ここに誓います!
    と2015年の宣誓より9度目の干支は、、、
    卯(うさぎ)、、、」

    とのHEADZの崇高な誓いのもと、進行するのは画像のプラグ。ここまで来ると、もはやベースとなっているブンビーニョではなくなってしまっています。ただし、最初はこういうユーザーの不法(?)改造(改造する人って、よっぽどの衝動があるはずだから、それを押し殺す必要は全くもってない。ただ、そこに必要なのはセンスと愛ですよね)にも似た企画に戸惑いを隠せなかったのだけれど、9回目ともなるとこれに乗じてかえって悪ノリしてしまう元木なのです。それどころか、HEADZの発想には舌を巻いてしまわないでもない。

     それにしても、そのアイデアを料理して、そしてテストするのは思いのほか大変です。でも今回も思いのほか良いものが出来た。これならレギュラーに転用したいほど。

     ぜひご予約を、と書こうと思ってHEADZのページを見たら、既に売り切れでした。時既に遅し。早々にご予約の皆さん、ありがとう!もう少し待ってて下さい。

     別注と言うと、自己別注という形のオンラインストアリミテッド。一昨年のSonic Vita Jあたりからラッカーコーティングを限定的に復活させています。先日、ナタリーが持参してくれたのは画像のまさにそのラッカー仕上げタバコサンバーストのSonic Vita J。使用状況にもよると思うけれど、一年余りでこういう状態になります。

     それは予測の範疇で、思っていた以上に良い雰囲気だと元木は思っているし、もちろんナタリーもそのようです。しかし、これをよしとするか否かは使い手次第です。これが理解出来ないという人も、理解は出来るが実際に買うのはちょっとと思う人もおそらくはいるはず。

     ただし、よくご覧いただくと、クラックが発生して剥がれかけているのは下地の外側で、木材自体は侵されていないということがわかる人にはわかると思います。本来のエイジングを求めるのならばそれもまた良し悪しですが、木材にまで浸水が及ばないので使うことには支障はありません。

     実を言うと、このリミテッドSonic Vita Jの在庫分にクラックが発生して、それを逆手に取り人工的にクラックを入れたのがRelic企画の始まりでした。今じゃ早々に完売となるRelic企画だけれど、こうしてマニアな理解者が増えてくれるのは望むところ。

     初売りのRelic LBBのうちSonic Vitazinhoは完売ですが、画像のMighty Arrow Mini Tandemには少しだけ在庫があります。Sonic VitazinhoにもそしてこれまでのTSBにも負けず劣らずの雰囲気があるMighty Arrow Mini Tandem、あるうちにいかがでしょう。

     それにしても、よりヘビーなエイジングのSonic Vitazinhoの方が先に売れてしまうっていうのも考えてみれば不思議なものですね。

     ところでFishing Safariチャンネルの新年二発目はトップウォーターの基本 vol.7 フック編。普段何気なく使ってしまっているトップウォータープラグのフックにもいろいろと蘊蓄がないではない。今さら聞けないフックの疑問をお持ちのベテランのあなたにもぜひ。

     それを観た三重県にお住まいのミナミ240より、あのフックシャープナーの銘柄は?との質問が早速あったのでここにも載せておきます。細部は変わっているけれどおそらくこれです。サイドの溝にフックポイントをあててシュッとやるだけで、まるで刺さりが変わる。お手軽便利です。

     フックって、当たり前だけれど大事ですよね。にもかかわらず、元木自身もそうだったけれど、頓着しない人がいると思う。しかし、それは損します。フックで釣れる、釣れないも使い勝手も劇的に変わるから。

     例えばWフックよりはトレブルフックの方がよくかかる。しかし、ご存知のようにスナッグレス性能はWフックが勝る。トレブルフックでもスプリットリングを介した方がよくかかるしバレにくい。ただ、それに反比例して同じくスナッグレス性能は劣る。それから化研とそうでないとでは刺さり具合が驚くほど違う。(だから化研でない場合は最初に研いでおくのが必須)

     趣があって機能的にも場合によってはそうは劣らないと思える旧来の方式か、それとも機能に徹した最新の方式か、これらの選択肢のうちからあなたはどれを選ぶのか、です。フックなんだから刺さった方がいいに決まっていると考える人ならトップウォーターオンリーなんて選択肢はそもそもなかっただろうから、それは自ずとセンスにかかわる問題。(ちなみに、将来的に宗旨変えする可能性は0ではないにしろ、そこでTsunami Luresが選んだのはドスカクタスであり、トレスカクタス。ブラックバス以外の魚を釣るにあたっては他のフックをチョイスせざるをえない場合もあるだろうけれど)拝読中のThe History of Lure Fishingの一節には「釣法こそが実は釣り人の「目的」であって〜」とあるけれど、フックのチョイスもその釣法の重要な一部であることは言うに及ばない、と動画のコメントにも書いた通り、そこは悩ましいし、センスが求められる部分なんです。釣りの面白味ってそこにありますよね。

     

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