Tsunami Times
ワンペロ

ワンペロはTsunamin Luresの癖のあるダーターの一つである。そもそもダーターなんていうジャンルそのものが曲者で、ブランドの初期には例えば亥やくじラフェや、そしてこのワンペロなんかを、ダーターと言っていいものかどうかさえ、少し考えさせられたこともあった。ほどなくして、そんなことはある種「どうでもいいこと」だということに気づくのだけれど、当時の元木は右も左もわからない新人ルアービルダーで、トップウォーター界隈のオーソリティー然とした人たちの言うダーターの定義は、参考にはなるものの一方でなかなか煩わしいものだったから。
そう言う意味もあって、ダーターというジャンルにあっては、ワンペロは少々特異と言っていいとは思う。でも、だからこそTsunami Luresには必要なプラグ。ダーターはこうあるべし、なんていうステレオタイプの打破という意味でも。
ただ、成形にあたってはちょっとした苦労もある。問題となるのはフロントの切れ込み。手で削っている分にはなんとかなるのだけれど、量産する場合はここを揃えるのがどうも面倒なよう。木工業者には断られたこともあったし、受けてもらってもコストが普通ではないくらい嵩んだこともある。今回は過去にお願いしたところとは違う新しい業者にお願いしている。決して安いとは言えないけれど、それなりのコストで作ってくれた。ありがたいこと。

そんなちょっとした難しさがあるにも関わらず、そんなことは理解されるはずもなく、プロモーションの後押しになるわけもなく、そうそう売れやすいプラグではないのである。だから、必要なプラグだとはわかっていても、リリースには億劫になりがちで、気づいたらもう10年が過ぎていた。
そうは言っても、もう3度目か4度目のリリースで、今回もカラーリングには苦労した。実際の作業と言うよりは、一体どんなカラーパターンを投入するかというところに、長い時間を割いてしまった。その結果がこれ。

そこにはCrazy Fishがない。このところのTsunami Luresを代表するカラーリングである。そのミントグリーンというベース色も、他ではあまり見ないうちに特有のもの。ちなみにCalaveraは、時にアイボリーベースにしたりもするけれど、そういうわけで今回はベース色をLight Mint Greenにしたということもある。
それはそれとして、このところずっと外さずにいたCFを外すのには、大袈裟に言うとちょっとした勇気がいった。それを待っている人もいるはずだから。それは決して多くはないのだけれど、それでもそういういつも買ってくれる人たちのおかげで成り立っているTsunami Luresですから、そこが元木は心苦しい。
でも敢えてそうすることにした。そういう人たちこそは、元木のその決断を尊重してくれると信じることにしている。

毎回のことではあるのだけれど、関係のない人からすれば実に些細なそういう悩みや迷いの上に、プラグのリリースは成り立っていると言うこと。
六十をもう三年も過ぎているわけで、そんな歳にもなれば、てっきり泰然自若としているものと思っていたけれど、元木の場合はそうではないようだ。

追記
このカラーリングにはちょっとしたストーリーがある。あまり説明するのも何なのだけれど、ここを読んでくれるマニアックな人だけに向けて、少し触れておくことにする。
メキシコの祝祭、死者の日(Día de Muertos)についてはご存知かと思う。その日、街中はカラベラで埋め尽くされる。カラベラは死を明るく前向きに捉えるシンボルで、元木にとってはメキシコ自体を象徴するもの。それに直接的にインスパイアされたのが、うちのCalaveraというカラーパターン。ワンペロにはこれがどハマりする。というか、Calaveraというパターンはここから始まったかもしれない。そこは実は自分でも定かでないのだけれど。
そのCalaveraはもちろんありきでカラーリングを考えた。だからというわけではないのだけれど、新しいパターンを眺めていたら、これがなんだか繋がって見えて来てしまって、そこで考えたネーミングがこれ。メキシコにありがちなおっさんに見えなくもないDon Pancho(ドン・パンチョ)、豹のつもりだったもののオアハカのウッドカービングの悪い猫みたいにも見えるGato Diablo(ガト・ディアブロ / gato = 猫、diablo = 悪魔)は、沼の妖怪みたいなBayou Chico(バイユー・チコ)というわけだ。
そうなるとこの頃定番のBloody Headも、そしてもちろんSkullもそのストーリーの登場人物としてまるで違和感なく見える。
そして、ここに全登場人物が揃ったのでした。
26/07/06

















