Tsunami Times

  • ドキドキ

     考えてみれば、津波ルアーズがタックルボックスをリリースするのは初めてのこと。折り曲げ製法(?)で加工した、角張ったアルミのボックスというのにどうも食指が伸びず、ついついここまで来たというのが正直なところ。

     それに比べると、ホームセンターなんかでも見かけることのある、絞り製法で作られたこの東洋スチールのボックスは、角が丸くて山型で形状としては申し分ないと以前から思っていた。なんだか昔気質でレトロでさえある。だからこそこのところセレクトショップや雑貨屋でも見かけるし、さらにはファッションブランドの別注なんかでもどうやら東洋スチールはもてはやされているようだ。

     随分前から考えていたことではあるのだけれど、去年のある日、ダメ元でここに別注依頼のメールを入れてみたところからことは始まる。

     そもそも量産品であるので、ミニマムロットがうちのような小さなメーカーでまかなえる数ではない。少なくも出来なくはないが、仕入れ単価が市販品ほどになる。そんなわけで一度はあきらめた。ところが、担当者がなぜかうちで売ることに熱心でわざわざ何度も事務所に足を運んでくれた。ミーティングを重ねるうちその気にさせられる。

     出来上がった別注色はとても良い出来で、これまたさらにやる気にさせられた。しかし、それでもこのままでは値段を上げるための要素がいかんせん弱い。

     元よりプレートを入れるための窪みが両端にあるので、右側にはブランドロゴのプレートを入れよう。それから左の小さな方にはオリジナルのステッカー。中には仕切りもいるだろう。中蓋はどうだ?というわけでどんどんエスカレート。さすがに中蓋までやってしまうと値段が合わないと思ったので、これは見合わせた。

     もちろん仕切り板だけでも相当なコストアップになるから、仕切り板は磨きをかけることはやめて、アルミの切りっぱなしのエッジを家内制手工業でやすりがけすることにした。かなりの手間だけれども致し方ない。

     そうして出来上がったのがこのPlugger’s Steel Box。いや、正確に言うと、まだ出来上がっていない。これから仕切り板の家内制手工業が待っている。それからロゴプレートがピカピカ過ぎるのも雰囲気ではないので、やれた感じにするヘアライン仕上げも自分でやるつもり。やれやれ・・・。

     それにしてもものを作るにはストーリーというものがある。それがモノ自体に現れているのかどうか。感じ取っていただくことが果たして出来るのか。いつだってドキドキなのである。

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